福岡で失敗しないおひとりさま「安兵衛」

博多「安兵衛」

今や『おでん』と言うとコンビニのそれを思い浮かべる方も多いかもしれない。

かつては屋台や駄菓子屋や食堂の店先におでんの風景があった。ただ今ではそういったものはごく一部になってしまったようだ。

そんな中でも、おでんを供する飲み屋は今でも健在だ。今回は福岡県博多の天神にある50年以上も続いているおでんの老舗『安兵衛』だ。

つい先日、随分と気温が高い日に伺ったのだが、昔と違ってもうおでんイコール冬というわけではない。そうは言っても、お店の方はこんな暑い日にようこそという感じで迎えてくれた。

博多は福岡市

そう言えば『博多』って福岡市博多区であって、博多市というのは当然存在しない。そんなの当り前のことだが、意外に博多市があると勘違いしている方も居るようだ。

以前民放で博多市というテロップが流れたことがあるという話もある。確かに県外の人間からすれば博多駅もあるし博多美人とか博多人形とか博多織とか勘違い要素は多分にあるかも。

実際『福岡』の名前は黒田官兵衛の長男・長政が城を築いた那珂川から西のエリアを『福岡』と命名してからのこと。博多の地名は奈良時代から出てくるから800年以上の違いがある。

長政が『福岡』としたのは、確か黒田家祖先ゆかりの備前国(現在の岡山県南東部)邑久郡福岡に因んだものだったはずだ。

明治になり、市の名前を決める際に福岡か博多か揉めたらしいが、結局は福岡市で落ち着いた。その代わりに福岡市の中心駅を博多駅としたのは博多派を宥める方便だったという話だ。

おでんのルーツ

ところで、『おでん』のルーツは室町時代、拍子木型に切った豆腐に竹串を打って軽く焼き辛味噌を付けて食べた『田楽』に由来するようだ。

その『田楽』自体は、形が田植えの時の豊穣祈願の楽舞である『田楽舞』を踊る姿に似ていたことからその名前が付いたらしい。

そして、その『田楽』に『お』を付け丁寧にして、楽を省いて『おでん』となったというのが有力みたいだ。これは宮中や院に仕える女房が使い始めた隠語的な女房言葉だそうだ。

やがて江戸時代になると、豆腐だけではなくさまざまな具材を焼いて食べるように広がりを見せていったらしい。

更に時が経ち、明治頃には煮込んだ汁気の多いものへと発展し現代のおでんへと進化していったということだ。フムフム。

福岡で外せないおでんのお店「安兵衛」

博多「安兵衛」

さて話が随分と逸れてしまったが『安兵衛』だった。

ミシュラン2014福岡佐賀特別版でビブグルマンを獲得

博多「安兵衛」

博多でおでんと言ったらやはり創業昭和36年のこのお店だろう。少し前のことになるが、ミシュラン2014福岡佐賀特別版でビブグルマンを獲得している。

この『ビブグルマン』、星は付かないけれどコストパフォーマンスが高く、良質な料理を提供する飲食店・レストランに与えられるものだ。

「安兵衛」の歴史

博多「安兵衛」

さて、『安兵衛』の始まりは1932年に今の大将のお父様が大連市に開店した居酒屋。敗戦後引き上げてきて1961年には箱崎で再び店を開き、1965年に今の場所に移ってきたそうだ。

半世紀以上おでん一筋。店の入口に掲げられている木の看板の字は先代が書いたものだ。そう知って見てみるとまた違う印象を覚える。

そうそう、検索で『安兵衛・博多』と打ち込むと、博多駅博多口から徒歩4分のやきとり居酒屋『安兵衛』が出てくるが、全く違うお店なので気を付けたい。

アクセス

『安兵衛』は西中洲の静かな路地裏にひっそりと店を構えている。博多駅からならタクシーで行けば15分くらい。

地下鉄なら天神駅で降りて16番出口から地上に出て、天神中央公園を抜けて橋を渡り国道に出たら右、すぐ左に入り、更に右の細い道沿い、10分は掛からない。

こんなお店

博多「安兵衛」

濃い紫の暖簾を潜りいかにも年月の経った引き戸を開けて中に入れば、それだけで良さそうなお店だとすぐにわかる。

左手には何とも言えない良い色になっている分厚い檜の一枚板のカウンター席、右手には六人掛けのテーブル席が3つ。天井はいわゆる『舟屋造り』。この空間だけでも素晴らしい。

三代目

店を切り盛りするのは二代目の大将とその奥様、そして三代目の息子さんの三人だ。三代目が居るということはこの先もこの店が存在するということ。

これはとても大事なこと。跡継ぎが居なければ、どんな名店でも、老舗でも、人気店でもやがて近い将来終わりを告げることになる。

そのようにして惜しまれつつも無くなってしまったお店は数知れない。そういう意味では、このお店はしばらくの間はまだまだ安心ということになるのは嬉しいことだ。

「安兵衛」のおでん

博多「安兵衛」

先ずお通しに『鯛味噌の田楽』が出てくる。これが実に美味しい。当然おでんへの期待感は増すばかりだ。

黒いおでん

博多「安兵衛」

直径50センチくらいの銅鍋の中には美味しそうなおでんが入っている。ここのおでんは関西でいう薄口醤油を使う関東炊きとは違って濃口醤油を使っている。

博多「安兵衛」

なので、出汁の色や皿に盛られたおでんを見ると黒くて味がすこぶる濃そうに感じるが、実際に口の運ぶと決してそんなことはない。

博多「安兵衛」

おでんは銅鍋の中を覗いて自分で選んでも良いし大将におまかせというのもありだ。食べごろのものをちゃんと選んで出して下さる。

博多「安兵衛」

どのネタを頼んでももちろん美味しいに決まっているが、外したくないのが玉子。殻が付いたまま煮込まれた玉子はちゃんと中まで出汁が染み込んでいる。

おでんにはやはり日本酒

博多「安兵衛」

冬は当たり前だが、暑くなっても思わず食べたくなる美味しさだ。お酒も最初はビールでも、やはり日本酒に切り替えたくなる。

博多「安兵衛」

そんな時でもちゃんと福岡の地酒が何種類か用意されている。『庭のうぐいす』や『綾香』などなお。湯呑み(?)に入れられて出されるのがまた良かったりする。

おでん以外のお品書き

博多「安兵衛」

おでん以外のメニューは潔いくらい殆ど無い。ゆっくりと食べながら飲みながらでもそんなに長居をすることはない。でも心地よくゆったりとした気分になれる。そんな名店だ。

「安兵衛」アクセス・営業時間などなど

最後に「安兵衛」の基本情報。

住所:福岡県福岡市中央区西中洲2-17

電話:092-741-9295

営業時間:18:00~23:00

日曜休

その他:全面喫煙可

予約可

カード不可

おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)

 

安兵衛おでん / 天神南駅中洲川端駅西鉄福岡駅(天神)
夜総合点★★★★ 4.5

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