とんこつラーメンの歴史
九州初のラーメン屋台?「南京千両」
ところで『宮本時男』さんをご存じだろうか?
そんなの知ってるに決まってるでしょ!の方も居るだろうし、誰だそれ?の方も居るだろう。元々はうどんの屋台『たぬき』を営業していた方だ。
その後、宮本氏は横浜南京街(現中華街)や東京で志那そばのつくり方を学んで、『九州初のラーメン屋台』を開くことになる。それが80年以上昔の昭和12年(1937年)のこと。
それが福岡県久留米市の明治通り沿いで開業した屋号『南京千両』。さすがにこの名前が出てくれば初代の名前は知らなくても『あ~』となる方が多くなるに違いない。
やがてその志那そばに初代出身地の長崎ちゃんぽんを参考にして豚骨を使ったスープを合わせるようになる。これが九州豚骨ラーメンの元祖と言われている。
「南京千両屋台」はどこへ?
この『南京千両』、本店は南久留米駅徒歩8分ほど。そして屋台も今も同じ明治通り沿いにあるようなのだが本当にあるのか!?
というのも、あるとされている辺りに何回か目指して行ってみたり、たまたま通ったりした時に1度もその屋台に遭遇したことがないのだ。
どうなっちゃっているのか?をもし知っている方が居たら教えて下さい。
「南京千両マリン店」
明治通り沿いから少し離れた蛍川町には初代の長女さんが開業した『南京千両マリン店』がある。ここはラーメン専門店ではなくて居酒屋メニューもあるしお酒も色々揃えている。
南京千両の屋台は?というと、弟夫婦が引き継いでいるようだ。こうやって脈々と引き継がれているのは嬉しいことだ。
元祖白濁スープ?の「三九」
元々『南京千両』のスープはもっと透明だったらしい。それを1947年創業の屋台『三九』でたまたま白濁させてしまって今の白濁スープの最初が生まれたというのは有名な話。
ちなみにこの『三九』の屋号は南京千両の初代が名付け親なんだそうだ。『ありがとう=サンキュー』から『三九』。
とんこつスープ発祥説は他にもある
例えば、1948年頃の博多で『〇一』といううどん屋台をしていた津田茂氏が、兵隊として中国に居た時に奉天で食べた中華麺の記憶を頼りにつくった『元祖赤のれん』説。
ちなみに奉天の中華麺はアイヌ料理のソッポという白濁豚骨スープに中華麺を入れて『10銭そば』という名前で人気を博していたもの。
例えば、1948年名古屋で台湾人から教わった台湾料理のラーメンを魚河岸長浜で出した榊原松雄氏が開発したと言う『元祖長浜屋』説。
例えば、1944年店主の姉が横浜看護婦時代に世話した中国人男性から、お礼にとんこつスープの調理法を伝授され、その調理法が伝わったとされる鹿児島『のぼる屋』説。
時代は似たり寄ったりだが、どれが本当のところなのか?はよくわからない。まあ発祥とか元祖とかっていうやつは色々あるし、皆主張するだろうから結局はわからないままなんだろう。
大砲ラーメン合川店
というわけで前置きが長くなったが、今回は久留米の『大砲ラーメン合川店』。
大砲ラーメンの歴史
この『大砲ラーメン』は創業昭和28年、『南京千両』と同じ明治通り沿いに出来た屋台。香月昇氏とその奥様が始めたそうで、その頃のラーメン一杯の値段は並で60円。
元々は姉婿が『南京千両』に触発されて始めた屋台『清陽軒』で働いており、その店で技術を覚えて自分で屋台を出したそうだ。
その後昭和42年に屋台は閉めてしまい、その代わりに現在の本店所在地にて店舗営業を始めた。そして今では二代目が頑張っている。
『呼び戻しスープ』の名付親
ちなみに久留米ラーメンの一部の老舗で古くから用いられてきた技法、『呼び戻しスープ』というネーミングはここの二代目が考えたという話。
この大砲ラーメンも創業以来一度たりともスープの釜を空にしたことはない。その日につくったスープを完全に使い切らず常に少しだけ残す。
そして翌日の仕込みの時にこれを活かして、その都度新鮮なスープと豚骨を継ぎ足していき、日々味を積み重ねている。
「大砲ラーメン」店舗
この『大砲ラーメン』は、今回の「合川店」以外にも、
- 本店
- 長門石店
- 上津店(旧名:昇和亭)
- 吉井店
- 小郡店(松崎分校)
- KITTE博多店
- 天神今泉店
- 福岡小田部店
- 大分店
- 別府海岸通り店
- 吉野ヶ里店
と九州内に結構な数の店を構えている。
それぞれのお店の味が同じレベルなのか?それともやはり店毎に多少のバラつきがあるのか?は合川店とKITTE博多店しか行ったことがないのでわからない。
木造校舎のような合川店
さて合川店は久留米ゆめタウンの敷地内というか隣接した国道210号バイパス沿いにある。建物は木造校舎がコンセプト。
廃校になった矢部村の飯干小学校のものを使っていて、床は廊下の板、客席と厨房の薄緑の仕切り窓は教室のガラス窓、メニュー板は黒板、店外軒下の長椅子と門柱表札は階段の板。
外観は『千と千尋の神隠し』の舞台、『油屋』のモデルの一つも言われている『道後温泉』をイメージしたらしい。店内は広く、一言で言えば『懐かしい』感じがするお店。
店内には木造校舎のコンセプトにも拘らずミスマッチのジャズが流れている。童謡とかラジオ体操の曲とか流れてきそうだがそこはジャズ。
「大砲ラーメン」実食
お冷は緑茶の大砲スタイル。ただの水より緑茶の方がやはり嬉しい。ラーメンはこってり系の屋台時代の復刻『昔ラーメン』と、まろやか系の『ラーメン』に分かれる。
『昔ラーメン』はバラチャーシュー、半ゆで玉子、刻み青ねぎ、海苔、シナチク、そして豚の背脂を揚げた揚げ玉、通称カリカリがこれまた美味しい。
こってり系とは言っても、思ったよりも見た目よりも案外サッパリしていて、クリーミーな上に甘みがあってとても美味しい。
高菜チャーハンの方も、マヨネーズが付いていて、これを混ぜて一緒に食べると予想以上に合う。まあいずれにしても、安心して食べられる安定の美味しさなのは確かだ。
「大砲ラーメン」合川店アクセス・営業時間など
最後に「大砲ラーメン合川店」の基本情報。
住所:福岡県久留米市新合川1-4-43
電話:0942-44-1116
営業時間:11:00〜24:00
1/1のみ休
その他:完全禁煙
※外に喫煙出来るところあり
お取り寄せもあって、例えば’ラーメンと昔ラーメン各2食で税込み、送料込みで3,500円などもあるが、やはり店舗で食べたいところ。
大砲ラーメン 合川店 (ラーメン / 五郎丸駅、久留米大学前駅、宮の陣駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.5
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