JR東日本の車内誌トランヴェール
北陸新幹線や東北新幹線に乗ると『トランヴェール』という車内サービス誌が座席ポケットに入っている。ちなみに『トランヴェール』はフランス語で『緑の列車』という意味だ。
こういった車内誌は他にもJR西日本なら『西Navi』があるし、JR九州なら『Please』があるが、内容の濃さからすると、やはりこのトランヴェールが一番読みごたえがある。
もちろん飛行機の機内誌も充実度に比べたら敵わないが、それでもなかなか面白くて必ず読んでしまうのだ。
唯一手元にあるのが2015年3月号
このトランヴェールの創刊は1988年4月。今年が30周年。大概は社内でサッと読んでしまうので、ご自由にお持ち帰りくださいと書いてあっても実際に持ち帰ることはまずない。
ただ少し前のものが一冊だけ手元にある。2015年3月号、ちょうど北陸新幹線が長野駅 – 金沢駅間で開業した時のものだ。
太田和彦氏の『居酒屋を旅する』24〔最終回〕が掲載されている
なぜこれがあるのか?と言うと、太田和彦氏の『居酒屋を旅する』の最終回が掲載されていたからだ。
その頃はまだ太田氏の本を読んだことも、どんなお顔なのか?も全く知らなかった。そもそも一人で居酒屋に入るなんてこともなかった。
それでも、その絵と文が何となく気に入って車内で読むのを楽しみにしていたものだ。なので、最終回だしせっかくだから頂いておこうかなとなったわけだ。
最終回のお店が金沢にある「大関」
それからほどなくしてあちこちでのおひとりさま居酒屋が始まるわけだが、この最終回に掲載されているお店には未だ行ったことがなかった。
それが先日金沢出張に行く前のこと。ふとそのお店が金沢にあることを思い出したのだ。それで唯一手元にあるトランヴェールを引っ張り出して店名を確認、初訪問となったのである。
そのお店が創業昭和36年の老舗大衆割烹『大関』である。
金沢で失敗しないおひとりさま「大関」
JR金沢駅からはタクシーで行くなら約15分ほど。バスなら片町『ラブロ前』のバス停で降りれば歩いて2,3分で到着する。
「大関」の歴史
創業者は明治39年生まれの平角太郎さん。104歳でお亡くなりになられたそうだが、なんと103歳の時までお店に出ていたというのだからこれは驚きだ。
最初は今の場所ではなく、主計町茶屋街、ひがし茶屋街と並び金沢三大茶屋街とされるにし茶屋街にお店を持ったようだが、これからは大衆相手と考え今のところに移ってきたらしい。
「大関」には入口が2つ
さてそのお店だが、両側が通りに面しているからだろうか、それぞれに入口がある。中に入れば長いカウンター。14,5人は座れるだろうか。真っすぐではなく微妙に角度がついている。
カウンターの上には大関と染め抜かれた暖簾、天井も菱模様だったりとよく見るとあちこちに老舗感があってなかなか良い雰囲気である。
その後ろには座敷席。しっかりとした引き戸によって3つに仕切られているが、大宴会ならば外すことも出来るのだろう。
おでん舟
カウンターの前には大きなおでん舟。どこでもそうだが、ここに様々なネタが入っているのを見ると何だか不思議と楽しくなってくる。特にまだぎっしりと入っている時間は尚更だ。
おでん舟は大きく4つに分かれている。スジばかりが入っているスペース、その他あれこれとネタが更に細かく仕切られた中に浸かっている。
一か所だけ何も入っていないスペースがあるがこれは多分燗付け用なんだろう。おでん舟のちょうど目の前に座ることが出来るとつい嬉しくなってしまう。
ふとその先を見ると一枚のビラが壁に貼られている。『感謝デー🍢月曜日は(カニめん除く)おでんひとつ百円』。
これはかなりお得だ。なにせ一三〇円の玉子から六〇〇円の梅貝まで、どれでも百円というのだからなかなかの大盤振る舞いだ。火曜日が定休日だからということもあるかもしれない。
料理
やはりここ来たらおでんを食べないわけにはいかないだろう。もちろん月曜日ではなくてもだ。出汁は関西風の優しくなおかつ深みのある味わいで誠に美味しい。
金沢ではカニ漁が解禁になると香箱ガニの殻に、カニから取り出した身・外子・内子・ミソの全てをきれいに詰め直して蒸しておでんのネタにする。これが『カニめん』だ。
これは冬場しか食べられないのが残念だが、そのカニめんがなくてももちろんどのネタもとても美味しくついつい食べ過ぎてしまうかもしれない。
もちろん「大衆割烹」だけに他にもいろいろと魅力的なメニューが並んでいる。定番メニュー以外にもボードに書かれたものがあるのでそれを頼むのも良い。
但し、『時価』というのが結構あるので調子に乗って頼みすぎるとそれなりの値段になってしまうだろうからそこは注意が必要だ。
それでも丁寧な仕事でつくられる料理だからどれも間違いなく美味しいに違いない。他のお客さんに出しているものを見ているとそれがよくわかる。『お値段以上大関』という感じだ。
お酒
さて、お酒は店名通り『大関』しか置いていない。もちろんビールや焼酎は置いてあるが、日本酒に関しては大関だけだ。
『特選』と『上選』がある。冷酒だと多聞酒造から譲渡された『多聞』の『多聞・本醸造生貯蔵・爽』が出てくる。
最初の一杯だけはおかみさんが酌をして下さるのがここのお約束みたいだ。金沢なのに大関というのもなんだがそういうものだ。これだけが少しばかり残念。
それを差し引いてもここは充分に満足出来る美味しいお店である。夜の候補に入れるだけの価値は間違いなくある。
「大関」アクセス・営業時間などなど
最後に「大関」の基本情報。
住所:石川県金沢市木倉町1-5 中泉ビル 1F
電話:076-221-9450
営業時間:16:30~22:00頃
火曜定休
その他:全面喫煙可
予約可
カード可
おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)
早い時間なら予約はいらないかもしれないが、おでん百円の月曜日はそうはいかないかもしれない。
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