さて、今回は大阪から。
大阪「酒肆 門」
このお店の屋号、『門』の前に付いている『酒肆』と言う言葉はご存じだろうか?
酒肆
『酒肆』とは、酒を売る店とか酒を飲ませる店という意味。『続日本書紀』の天平宝字5年(761)3月己酉の記事の中に出てくる。
己酉、葦原王坐以刄殺人、賜姓龍田眞人、流多褹嶋。男女六人復令相隨。葦原王者、三品忍壁親王之孫、從四位下山前王之男。天性凶惡、喜遊酒肆。時与御使連麻呂、博飮忽發怒、刺殺屠其股完、便置胸上而膾之。及他罪状明白。有司奏請其罪。帝以宗室之故、不忍致法。仍除王名配流。
葦原王という人物が種子島に流される原因となったのがこの『酒肆』。即ち、酒肆で一緒に呑んでいた人物を刺し殺してしまう罪で流刑になっている。
曽根崎心中ゆかりの地
そんな『酒肆』の入口『門』は、近松門左衛門の『曽根崎心中』ゆかりの地である梅田の露天神社、通称お初天神のすぐそばにある。
神社にも行ってみたがなかなか良い雰囲気。ただ実際にこの神社の天神の森で情死した事件があったわけだ。
堂島新地天満屋の遊女お初、内本町平野屋の手代徳兵衛、この2人の事件をもとに、近松門左衛門が劇化したものが『曽根崎心中』。
元禄時代のことだから、もう300年以上も昔の話。何でも300回忌の後、氏子の一人がお初さんのためにと100万円の寄付。
それをきっかけに、地元の商店街などから寄付金が寄せられることになる。そして2人のブロンズ像が製作されたらしい。
外観・店内
路地裏の小道に黄色い看板を見つける。しかし入り口がわからない。2階に店があるはずだ。
看板の建物の横に古びた扉がある。まさかここ?と取り敢えず開けてみる。すると、いきなり急な細い階段が目の前に現れる。そこを上ると店がある。
思っていたよりも小さなお店で、カウンターが4席。テーブル席が2つのみ。これは予約をして行った方が良いだろう。
店内の壁一面には客の落書き?と思っていたら、『寺田みのる』という方の絵だそうだ。『酒と女は二合まで』とはなかなかうまいことを言う。
メニュー
さて、ビールを注ぐのは錫のビアグラス。これ良い。キレイだ。熱伝導率が高いから飲み口がすぐ冷える。
お通しも良い。三品が良い。見た目も良い。味も良い。
メニューにはどれも本当に美味しそうな品があれこれと書かれている。価格は普通の居酒屋よりは随分高めのようだが、内容的には全然高くはないのだ。
『造里盛り合わせ』。なかなか素晴らしい内容である。この時は3人だったのでこれで三人前。
先ず『本鮪のはらかみ』。頭に近い腹の横の部分。油がのっている。腹かみがあるんだから腹なか、腹しもも当然ある。そして腹かみが断然旨いし高い。
関西だとしめ鯖とは言わずに『鯖きずし』。これもキレイな色で美味しい。酢は関東のそれより濃い目だが旨い。
『天然鯛・鰤』、『金目鯛』に『おばけ』。おばけは関東で言う晒し鯨。酢味噌で頂く。フワフワとしている感じだが噛むと意外にコリコリとしている。
そして『よこわのたたき』。ヨコワは黒マグロの幼名。味が既に付いている。これも美味。これだけで充分満足出来る。
『初入荷!!(ビックリマーク2つ)沼島 鱧』。落としで頂く。
『左越のかき 昆布塩焼き』。テーブルで火にかけられる。しばし出来上がるのを待っているととても良い香りがしてくる。これもまた美味しい。
『かんずりするめの一夜干し』。これはもう酒にはピッタリのまさにお酒のお友達様。進む。
〆は『名物 サバサンド』。サバをサンドイッチにしているものだ。いったいどうなの?と思うだろうが、これがまた何とも驚きの美味しさ。
お酒も色々と揃っている。
錫の徳利がとても美しい。
料理もお酒もお店の雰囲気も皆良い。
まさに三方良しである。
まとめ
それにしても、この店は食べ物が本当に美味しい。珍しくお酒以上に肴の方に興味を持たせてくれるお店と言っても良い。
居酒屋は酒が本来は主役だろう。でもその酒を引き立ててくれる肴は大事だ。今回は主役を喰うくらいの脇役が見事だったという感じか。
そうは言っても、もちろん日本酒の揃えだってなかなか素晴らしい。当然、居心地も良い。全てに申し分のないお店が大阪にあった。
「酒肆 門」基本情報
最後に「酒肆 門」の基本情報。
TEL:06-6364-3573
住所:大阪府大阪市北区曽根崎2-5-37
営業時間:17:00〜23:00 (22:30ラストオーダー)
日曜・祝日の月曜休
その他:予約可
カード不可
全面喫煙可
おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)
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