おひとりさまきっかけのお店「元祖どてやき下條」
一人で居酒屋に行くようになったキッカケのお店がある。
やはりここから始めたいと思う。
元々、一人で居酒屋?と思っていた人間がここを訪れてからというもの、全国あちこちで一人飲みとなったのだから、まさに『おひとりさまにおススメ』のお店と言っても良いはずだ。
それが山梨県甲府市金手にある『元祖どてやき下條』だ。
実際の店名が『元祖どてやき下條』なのか、『どてやき下條』なのか、『下條』なのか、はたまた『元祖どてやき』なのか、それとも『どてやき』なのかは定かではない。
「どてやき下條」は甲府駅から歩いて15分ほど
この店に行くにはJR甲府駅南口から歩くんだったら15分くらいはかかる。
途中に何か面白い風景でもあればと思うのだが、さほど楽しめるものもないので、出来ればタクシーかバスで行くのが良いかもしれない。
近くに泊まるなら「天然温泉 甲斐路の湯 ドーミーイン甲府」がおススメ
ちなみに、自分の場合はこの店の近くのホテルに宿をとることが多く、もっぱらタクシーでホテルにチェックインしてから2.3分歩いて伺っていた。
少しばかり寂れた感のあるアーケード銀座通りを抜けると県道29号線。ここを渡って左に行くと道路沿いにその店はある。
ワシントンホテルが道を挟んで向かい側にあるのだが、ほんの少し歩けば「ドーミーイン甲府」があるので、どうせだったらそちらに泊まりたいところ。
ここなら甲府のもう一つの名店『くさ笛』もすぐ近くだ。
「天然温泉 甲斐路の湯 ドーミーイン甲府」おススメのワケ
■天然温泉大浴場がある(内風呂・露天風呂・高温サウナ・水風呂)
※15:00〜翌朝10:00(サウナのみ1:00〜5:00利用休止)
※泉質:低張性弱アルカリ性高温泉・ナトリウム塩化物炭酸水素塩泉
※効能:打ち身・関節痛・筋肉痛・神経痛・冷え性など
※展望露天風呂から甲府の町並みや天気が良ければ富士山まで見ることができる
■夜鳴きそばが無料で食べられる
※毎日21:30〜23:00
「天然温泉 甲斐路の湯 ドーミーイン甲府」基本時報
■住所:山梨県甲府市中央1-14-3
■TEL:055-226-5489
「どてやき下條」の歴史はナント今年で81年
お店の外観はまだそんなに歴史を積み重ねているようには見えない。実はこれは道路拡張工事に伴って建て替えた新店舗なのだそうだ。
実際の創業は1937年(昭和12年)。もう80年もの長きに渡って続いているまさに老舗。初代は大阪で育った方だそうだ。
そして甲府に大衆酒場を開業、時は流れ、しっかりと跡が引き継がれ、今では三代目がカウンターの中で客を上手に捌いている。
『どてやき』って大阪でしょ?なのだが、もうこれだけの長い年月を甲府で重ねていれば、『元祖』と名乗っても良いのかもしれない。
いつまでも頑張ってほしい老舗のお店
経営している方のご苦労を考えずに敢えて言わせて頂くと、こういった老舗はいつまでも引き継ぐ方がちゃんと居ていつまでもお店が残っていてほしいと思わずにはいられない。
後を継ぐ者が居ないからという理由で閉めてしまうお店も少なくないはずだ。どれだけ老舗でも名店と言われていてもなくなる時はアッサリとなくなってしまう。とても残念なことだ。
そんな中で80年以上続いているというのはある意味奇跡と言って良い。でも奇跡は勝手に起こるわけもなく、お店の方々の努力と支えてきた地元のお客さんなんだろう。
「どてやき下條」の営業時間は早い・短い・確認必須
そうは言っても営業時間は非常に短いというか早いというか、なんと15時から20時までで、早めに暖簾を下げてしまうこともある。
休みは基本月・火だが、それ以外にも突然臨時休業することがある。実際、何度か閉まっていてかなり残念な思いをしたことがある。必ず電話で確認してから行った方が良い。
そうそう、営業時間が短いのは初代が酔っ払いが嫌いだったから早めに店を閉めたことの名残だそうだ。でも実は自分が早く店を終えて飲みたかったからなのでは?なんて考えてしまう。
「どてやき下條」の店内はまさに昭和だ
中に入ればやはりそこは昭和だ。壁に貼られた二代目の頃の古い新聞の切り抜き記事が壁に貼られている。そこには『梅わり3杯以上ダメの店』として紹介されている。
昔のメニューや古い時計やまねき猫の置物は時間を遡らせてくれるが、同じように随分と昔のなんだろう、おかめの大きなお面がいくつも並んでいるのだけはちょっと怖いかも(笑)。
右側にはコの字というかワの字のカウンターがどてやきの鍋を囲むようにしてある。この鍋はいつも大切に手入れされているのだろう、とても美しい。
左手にはテーブル席、奥には掘りごたつの小上がりもあって何人かで飲んでいる人たちでいつも賑わっている。
カウンターはおひとりさまのご常連も多く、サッと来てサッと帰られる方も多い。きっと毎日のように通っているのだろう。少し羨ましくもある。
ここではカウンターと他の席とは全く分離されていない。それでも全く気になることがないという珍しいお店だ。居心地が良い。
そのカウンターに座ると天井の大きな熊手がイヤでも目に入る。玉子などに使っている二股に分かれた竹串はこの熊手を毎年新しくした時に古いものを使って大将自らつくるのだそうだ。
新しいものと随分と使い込んだものを比較して見せて頂いたが、古いものは一回り小さくなっていた。何に使うわけではないが記念にと新・旧両方を貰えたのは何だかとても嬉しかった。
大将はもうお孫さんも居るような方で、こちらが静かに飲んでいれば放って置いて下さる。でも話し掛ければちゃんと会話をして下さる。付かず離れずでとても好感が持てる。
熊手の他にもぶら下がっているものがある。それが百円ライターと新聞紙を小さく切って束にしたもの。持っていてもそのライターで火を付けたくなる。
ちなみに新聞紙の方は、コースター替わりにしたり、カウンターを拭いたり、手を拭いたりと色々な使い方が出来て意外に便利。今のところこの独特のスタイルはここでしか見ていない。
「どてやき下條」メニューあれこれ
さて、どてやき下條のメニューを紹介しよう。久しく訪れていないが、多分殆ど変わっていないと思われる。
料理
先ずお通しとは別に、店名でもある『どてやき』が何も言わずとも当たり前のように提供される。まあどっちみち注文するに決まっているのだからそれで良いのだが、最初は少し戸惑う。
このどてやきは大阪が発祥の地だと言われている。
大正から昭和に移る大阪を舞台にした織田作之助が世に出るキッカケとなった短編小説、『夫婦善哉』の中に『どてやき』が出てくるのをいつも思い出す。
夜店の二銭のドテ焼(豚の皮身を味噌で煮つめたもの)が好きで、ドテ焼さんと渾名がついていたくらいだ。
さてお味の方だが、これが柔らかくてトロトロ、臭みもなく、どろどろと濃い感じでもなく、さっぱりしていてとにかく美味しい。
三本で今だと390円。以前は四本だったらしい。安いとは言え値上がりはしていく。それでもこのお店が残るのなら二本でも一本でも良い。
早い時間だとこの串が鍋一杯に入っているのだが、どんどん減っていき、最後には鍋に何もない状態。人気店で名物だから当たり前だが、その当たり前を目の前で見ているとスゴイ。
鍋には『どて玉子(一個200円)』も一緒に入っている。これもまた鍋の中の汁の味がよく染みているので当然美味しい。
『せんまい(700円)』も酸味が効いた味がお酒の肴にはもってこいだ。
ここのメニューの一部は三代目と二代目の晩酌のつまみだったらしい。この『せんまい』も元々は酢味噌を好まない二代目の為に今の大将がつくった味だそうだ。
『キャベツ炒め(400円)』もソースに黒胡椒が効いていて、結構濃い目の味付けなのだが、それでまたお酒が進んでしまう。
『レバーの塩焼き(800円)』、普段なら焼いたレバーは苦手なのだが、ここのは全く問題なく食べられるというか、イメージが変わる美味しさ。
これらは『半分』という文字通り半分の量にもしてくれる。これはおひとりさまにはありがたい。価格は半分ではないが、せんまい500円、キャベツ250円、レバー450円となる。
『なんこつ(500円)』も忘れてはならぬが、これはなぜか半分サイズがない。でもコリコリの食感が良くて一人で全部ペロリと食べられてしまう。
メニューには載せていないが時々『ねぎま』がある。ご常連に大将が今日はあること告げているのを聴いて興味深々に出てくるのを見て即注文。白もつを使っていてこれがまた絶品。
手に入った時だけのもので、それでも数はそんなに多くはつくれないそうだ。あったらゼッタイに食べておくべき一品だ。
こういった串ものでは、盛岡の『とらや』のやきとりや久留米の『赤垣屋』のダルムなどが、初めて食べた時にちょっと感動的だったのだが、このねぎまも引けをとらない美味しさ。
他には、なんとどてやきの汁を使った『やきそば(600円)』がある。これはいつも気になっていたのだが未だ食べていない。
あとは『ラッキョウ(300円)』に『漬物(350円)』に『トマト(600円)』に『もろきゅう(300円)』といった感じのメニュー構成だ。
そう考えると品数は決して多いわけではない。ただ、どれを食べても決して外れはなく、どなたでもきっと満足できるにちがいない。
お酒
お酒で特筆すべきは、やはり『梅わり3杯以上ダメ』の『梅ワリ『450円)』、そしてワインを焼酎で割るという『ぶどうワリ(450円)』。
どちらも美味しくスイスイと飲めてしまうが度数が高いのだから結構キツい。弱い方は注意されたし。
あと『ボルス』という聞き慣れないものがある。『玉子酒みたいなものだよ』と説明してくれたがこれは飲んでいる方を見たことがないのでどんなものか未だに知らない。
同じく頼んだことはないが日本酒は二種類。『一級酒』は『英勲』で『二級酒』は『腕相撲』だったはずだ。
まとめ
久しくこのお店には行っていない。現実的にはしばらく行けそうにもない。そう思うと行きたくなってくる。思い出すとすぐにでも行きたくなる、そんなお店だ。
もしも甲府に行くことがあったら是非思い出して行ってみて下さい。鍋に沢山どてやきとどて玉子が入っている早い時間が良いですよ。
「どてやき下條」基本情報
最後に「どてやき下條」の基本情報。
住所:山梨県甲府市中央4-2-15
電話:055-232-3044
営業時間:15:00~20:00
基本月・火休みだが臨時休業することが時々あるので問い合わせ必須。
その他:全面喫煙可
カード不可
おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)
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