まず京都で宿泊となれば必ず行くお店の一つが『赤垣屋』なのだが、当然他にも行きたいお店はある。その筆頭にあったのが今回のお店。
京都「神馬」
それが昭和9年の創業、今のお店でも昭和12年からの老舗『神馬』だ。
アクセス
このお店、ちょっと行くのには躊躇してしまう。
京都駅からバスで行くなら『50系統』か『206系統』で30分弱、『千本中立売』で下車して徒歩約1分。
京福電気鉄道北野線(嵐電)で行くなら『北野白梅町駅』から徒歩で17分と決してアクセスは良くない。
京都駅なら歩いて行ける距離にだっていくらでもお店はある。まあ、お店が沢山あっても、行きたいお店なのかと言うことは全く別の話である。
そしてこのお店、『わざわざ』行くだけの価値が間違いなくあるお店なのだ。だからこそわざわざ行くことになる。
外観・店内
千本通中立売上ル西側玉屋町。この町は水上勉の『五番街夕霧楼』の舞台でもある。
お店は通りに面している。商家の土蔵を改造したかのような外観(実際にそうなのかもしれないが)。
路地裏に古い店が何件も連なっているような風景とは違っており、明らかにこのお店の建物だけが異空間だ。
建物の上の方は白土壁に横に緑色で『銘酒』、縦に黒色で『神馬』も鏝文字が浮き彫りになっている。その下は板壁になっている。
入口には短い縄暖簾。その上には『境仙酒』と言う文字が浮き彫りになっている扇型の看板。
周りには袖垣に飾り窓。馬の様々な置物が飾られている。
そして丸い提灯。
掲示板のような大きな板にはこのお店が紹介されている雑誌の切り抜きが何枚も貼られている。
何でもこの建物自体は百年以上の月日を積み重ねてきたらしい。
ただ、大正天皇即位御経典の際、通りを広げる為に今の位置に曳き家して下げたそうだ。
店内は先ずコの字カウンターがある。
奥には太鼓橋が架かりその先には分厚い長い机がある。
ちなみにこの太鼓橋の先は、元々住居にしていた奥をお店にしたと言うことだった。
それで、座敷で座っていたところを下足で踏むのは…となって小さな泉地にして太鼓橋を架けたらしい。
壁の棚の上や中には古そうな酒器が色々と並べられている。だけなら雰囲気も良い。酒のポスターや新聞の切り抜きやらが何も考えずに貼られている感じ。
雰囲気を損ねている、と言った見方も出来るが、それらがまた違う雰囲気を創り出している。それはそれで老舗ならではの居酒屋らしさ。
嫌いじゃあない。高級ぶっているより全然良い。いずれにしてもいかにも古いお店なのだが、いわゆる昭和の大衆酒場風情とは全く違う。
どちらが良い・悪いはないのだが、やはりこういう雰囲気のお店は非常に貴重な存在だと言える。
そうそう、ここのレジは見事に古い昔のものだ。木製で味があってとても良い。4桁までしかなく、よって最高値は9,999円ということになる。
ちゃんとしたレジスターとしての役割は果たせてはいないが、お代はそこに入り御釣が取り出される。
メニュー
『お通し』は三種類。当然美味しそうだし、当たり前だけど美味しいに決まっている。ここで躓くと残念な気持ちになるが、ここは期待感が膨らむ。
『牛テール味噌仕立』がぐつぐつとまだ煮立っている。味噌仕立のスープは優しいけれど味が深くしっかり。
テールも柔らかく、口に入れるとすぐ溶けてしまうくらいである。これは正解の一品。
『トロの鉄火巻き』。口に入れるとトロがこれもすぐになくなる。たかが鉄火巻きとは言え、美味しいものは本当に美味しいことがよくわかる。
『合鴨ロース』もやはり美味しい。要するに何を頼んでも基本美味しいのだ。
お酒は色々あるのでお好みでどうぞ。お店の雰囲気が素晴らしいので、何を飲んでも美味しいのだ。
このお店ならではのものとなると、7つほどの銘柄をブレンドしたものがあるので飲んでおきたい。
まとめ
100年以上続く建物の中で食べる料理も飲むお酒もとても美味しい。よりおいしく感じさせる。なかなかそういう場所は少ない。
そういう意味では非常に貴重な老舗の居酒屋だと言える。
日本酒の揃えはさほど多くはないが、結局全部呑めるほど少ないわけでもない。選択肢が多い方が嬉しいのだが、こういう店の大体はこういうものだ。
そして、メニューの価格幅の広さには驚かされる。何でもかんでも高くでもなく、何でもかんでも安けりゃあと言うのでもない。
美味しそうな良い食材を吟味して仕入れ、それぞれに見合った金額を設定して、そこに手間を加え、更に美味しいものにして出していると言う感じだ。
好みは色々あるとは言え、ここは1度は訪れたい本当の名店である。
「神馬」基本情報
最後に「神馬」の基本情報。
TEL:075-461-3635
住所:京都府京都市上京区玉屋町(中立売通)38
営業時間:17:00~21:30
日曜休
その他:カード不可
全面喫煙可
おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)
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