知っている方が楽しい!美味しい!日本酒豆知識
これまでいくつか実際に呑んだ日本酒のラベルの紹介をしてきたけれど、そのラベルには実に様々なそのお酒の情報が掲載されている。
特に裏ラベルはそうだ。蔵元、日本酒度、原料、精米歩合、使用酵母などなど、まあお酒の履歴書みたいなものだね。
ただ、確かに何かいろいろと書いてあるのは知っているけれど、その意味はよくわからないという方だって居るかもしれない。
もちろん、別にそんな情報なんて知らなくたって、美味しいお酒は美味しいんだけれど、でも、どうせだったら知らないよりは知っている方がより楽しいし、もっと美味しく呑めるかもしれない。
というわけで、『知っている方が楽しい!美味しい!日本酒豆知識』を始めてみようと思う。
第一弾の今回は『ラベルの読み方』。
日本酒ラベルに記載されているデータの意味を知ろう!
例えば、以前紹介した『大山 特別純米 十水 大にごり原酒』のデータを例に見てみよう。
産地 | 山形県 | 容量 | 1800ml |
蔵元 | 加藤嘉八郎 | 日本酒度 | -5 |
度数 | 18% | 酸度 | 1.6 |
精米歩合 | 60% | アミノ酸度 | 1.75 |
原料米 | はえぬき | 酵母 | 山形NFKA |
産地
先ず『産地』はそのまま、どこでつくられたのか?ということだね。
どこの産地のお酒が美味しいのか?というのは好みだから何とも言えないし、どこの蔵でつくっているのか?の方がポイントのような気もする。
ただ、例えばこのお酒の産地は『山形』。酒造りに適した上質な米と鳥海山や月山や蔵王などを源にした清らかな水でつくられたんだろうなと想像するだけでも、お酒が更に美味しく感じられるかもしれない。
蔵元
そのお酒を製造しているオーナーが『蔵元』。
『酒蔵』という言葉があるけど、これはお酒を製造、貯蔵している蔵のこと。要は『蔵元』が運営するのが『酒蔵』だね。
それで、ただ蔵元の名前がわかったところで、そこがどういうところなのか?がわからなければあまり意味はない。
最近はホーム・ページのある蔵元も多くなっている(しかも結構オシャレなものもある)ので、それを覗いてみると良いと思う。
その蔵元の歴史や酒造りへの姿勢や拘りなどを知ることができてなかなか面白い。
例えばこの加藤嘉八郎酒造。創業は明治5年(1872)、米どころ庄内の蔵で、鳥海山・出羽三山等に囲まれ、その伏流水と最上川など豊かな水に恵まれている大山の町にある。
これを知るだけでも、お酒は更に美味しくなるというものだ。
度数
次の『度数』はもちろんアルコール度数のこと。
日本酒のアルコール度数は平均すると大体 15〜16% 程度。
ウィスキーやウォッカなどの蒸留酒に比べれば低いけど、ビール、ワインなどの醸造酒の中では、やはり日本酒はアルコール度数が高いお酒なのだ。
もちろんそこに当てはまらないものもある。最近だと低アルコール度のものもあるし、逆に例えばこのお酒のように18%とやや高めのものもある。
ちなみに日本酒のアルコール度数は22%未満でなければならない。同じ製法でつくられても22%を超えてしまうとリキュールなど他のお酒に分類されてしまうのだ。
本来、日本酒は20%くらいのアルコール度数になる。
日本酒づくりは、酵母が糖分を食べてアルコールを排出する『アルコール発酵』と、お米に麹菌をふりかけて、麹の酵素で米に含まれるデンプン質を糖分に変換する『糖化』を同時に行う。
なので、アルコール生成の効率が良く、必然的にアルコール度数は高くなるわけだね。ただ香りや味わいを調整する為に加水するので15〜16%のものが多くなるのだ。
精米歩合
続いては『精米歩合』。
『精米』は、米の外側を磨いて削り取ること。そして、『歩合』の方は割合のことだから、『精米歩合』は、お米をどれだけ磨いたか=お米の外側を削り取った割合となる。
例えばこのお酒の場合、精米歩合が60%だから、玄米の40%を磨いて、残ったのが60%だよということになる。60%磨いたんだよ、ではないんだね。これは意外に間違えやすいので注意。
では、なぜ米の外側を磨くのか?それは、米の外側に多く含まれるタンパク質や脂質を取り除く為なのだ。もちろん、これらは旨みとか苦味などの味わいに一役買うんだけど、多過ぎは雑味になる。
米の外側を磨くことは、雑味のないキレイな味わいの日本酒にするための重要な工程なんだね。
この精米歩合でお酒の種類が決められるから二重に重要と言えるかもしれない。
どう分けられるのか?=特定名称酒別の精米歩合の規定は下の表のようになる。ついでに原材料も一緒にね。
特定名称 | 原材料 | 精米歩合 |
純米大吟醸 | 米・米麹 | 50%以下 |
大吟醸 | 米・米麹・醸造アルコール | 50%以下 |
純米吟醸 | 米・米麹 | 60%以下 |
吟醸 | 米・米麹・醸造アルコール | 60%以下 |
特別純米 | 米・米麹 | 60%以下 または特別な醸造方法 |
純米 | 米・米麹 | 規定なし |
特別本醸造 | 米・米麹・醸造アルコール | 60%以下 または特別な醸造方法 |
本醸造 | 米・米麹・醸造アルコール | 70%以下 |
では、たくさん磨いている方が間違いなく美味いのか?といえば、これこそまさに好みだからね。たまに精米歩合をありがたがる方が居たりするけど、やはり歩合よりも好みでしょ。
1つ疑問点がここで出てくる。このお酒は『特別純米』を名乗っているけど、精米歩合が60%なんだから『純米吟醸』でも良いはずだよね。そういうお酒って結構ある。
そういうお酒がなぜ『純米吟醸』を名乗らないのか?
例えば他に『純米吟醸』を名乗るラインナップがあるとか、お米のふっくらとした旨味を感じてほしいからとか、きっとそういったことなんだろう。
原料米
日本酒の原料は当然米と水と麹だね。米は麹米と掛け米と酒母米がある。
麹米は、糖化の役割を持った米麹の元になる米。この米を蒸したところに麹菌を繁殖させたものが米麹。
掛米は、発酵中の液体=もろみをつくる時に直接使われる米。
酒母米は、日本酒を生み出す源である培養された優良なアルコール発酵を促す役割を持つ一種の微生物である酵母、即ち酒母用に使われる米のこと。
1度の仕込みで使われる米の割合は、麹用が2〜3割、酒母米が約1割、あとの約7割が掛米。
蔵によっては酒母米と麹米だけに割高な日本酒造りを目的に作られた米である酒造好適米を使って、掛米には割安な酒造用米を使うところもあるようだ。
例えば『山田錦使用』と書かれたラベルがあっても『山田錦100%』と書かれていなければ、実際は50%しか使われていないかもしれない。50%以上使用している場合は表記ができるからね。
このお酒の場合は『はえぬき』が原料米として記されている。このお米は飯米。では、酒造好適米じゃあないから美味しくないか?と言われたら全くそんなことはない。
一概に酒造好適米をつかっていれば必ずしも良いというわけではない。要するに、これも最後は好みということになる。
容量
ここでは1800mlだからいわゆる一升。
かつて日本酒の瓶のサイズは、約1.8リットル入りのこの一升瓶が主流だったけれど、その後に小ぶりの720mlの四合瓶やそれよりも少ない容量の瓶が重宝されるようになっている。
味が変化しないうちに飲み切れるサイズとして、四合瓶での流通にこだわる蔵元もあるくらいだ。
日本酒度
日本酒に含まれる糖分を表すのが『日本酒度』。
多くの場合、日本酒の甘口、辛口を知るための目安になる。マイナスになるほど日本酒に含まれる糖分が多くなり、プラスになるほど糖分は少なくなくなる。
こんな感じですね。
+6.0以上 | +3.5〜+5.9 | +1.5~+3.4 | -1.4〜+1.4 | -1.5~-3.4 | -3.5~-5.9 | -6.0以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
大辛口 | 辛口 | やや辛口 | 普通 | やや甘口 | 甘口 | 大甘口 |
ただ、日本酒は糖以外にもいろいろな成分を含んでいるので、一概にはマイナスで甘口、プラスで辛口というわけでもない。なので1つの目安くらいに考えた方が良いかもしれない。
それに糖度以外の酸度やアミノ酸度でも随分味わいは違うものだ。それに甘口・辛口と言っても、端麗甘口もあれば端麗辛口もある。濃醇甘口もあれば、濃醇辛口もあるのだ。
なので、日本酒度だけで味の想像をしてはいけないということだね。
酸度
この『酸度』は日本酒の酸味や旨味を示す数値。
数値が高いほど濃厚辛口、低いほど淡麗甘口であるとされている。酸度1.4〜1.6を境に、それ以上なら濃醇辛口寄り、以下なら淡麗甘口寄りとなる。
よってこのお酒の場合、日本酒度は-3だからやや甘口なんだけど、酸度は1.6なので濃醇辛口寄りとなる。
アミノ酸度
酒のコクや旨味のもとになるアミノ酸の量が『アミノ酸度』。
日本酒には20種類ほどのアミノ酸が含まれている。
一般的にはアミノ酸度が多いほど、ふくよかさや濃厚さ、旨味や味わいの広がりが増すと言われていて、特定名称酒のアミノ酸度平均値は、純米酒1.46、吟醸酒1.24、本醸造酒1.32というデータを見たことがある。
精米歩合の高い純米酒にはアミノ酸度が高いものが多く、精米歩合60%以下の吟醸酒にはアミノ酸度が低いものが多い傾向なのだ。
結局、日本酒の味わいは日本酒度と酸度とアミノ酸度が絡み合って決まるわけだね。だから数値を見ると何となく味わいも想像できるようになるはず。
でもね、そうは言っても呑んでみなければわからないというのが本当のところかもしれない。ただ数値で想像して選ぶのも楽しいものなのだ。
酵母
麹菌がデンプンを分解して生み出した糖を分解して、アルコール(エタノール)と二酸化炭素を生成するアルコール発酵に使われるのが『酵母』。
そして、アルコール以外にも、風味に影響を与える香気成分や酸もつくるのだ。
例えばこのお酒の場合は、『山形NFKA』が使われているが、これは穏やかな洋梨のような香りになる。
というわけで・・・
日本酒の瓶に貼られている裏ラベルに出てくる言葉の意味をざっくりと書いてきたけど、やはりこれらのことを知っている方が、選ぶ時の目安にもなるし、更に美味しくなる気がする。
もし日本酒を呑んだ時は、是非ラベルの表のデザインと共に、裏ラベルも見て、どんなお酒か?も紐解いて楽しんでほしいと思う。
ここに出てきた言葉で、結構わからないものもまだあるかもしれないけど、それは追々。
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