今回は麹関連を知ろう!がテーマ
日本酒のことをいろいろと知っている方が、選ぶ時も呑む時も楽しいし美味しいはず!
でも、例えば日本酒にまつわる様々な言葉って、何となく聞いたことはあっても、実はそれがどういうことなのか?は意外に知らない方も多いのではないだろうか?
そもそもどうやって日本酒がつくられるのか?だってわからない人も少なくないはず。
だったら、もっと日本酒が楽しく美味しくなるような日本酒豆知識を、誰にでもわかるようにしたい!ということで始めたのが、『知っている方が楽しい!美味しい!誰にでもわかる日本酒豆知識』。
前回『麹造り』のプロセスが出てきたけれど、今回は『麹関連を知ろう!』がテーマ。
麹菌
先ずは『麹菌(きくきん)』。『コウジカビ(麹黴)』のことだね。
麹をつくるための糸状菌の総称で黴の一種。湿度の高い東アジアや東南アジアにしか生息していない。麹菌を使うのは日本だけで、日本の『国菌』に認定されている。
麹菌の種類
麹菌には味噌用や醤油用、清酒用、焼酎用などなど、用途によって働きの異なる菌=種麹がある。
ということは、種麹に使われるカビの総称が麹菌ということだね。
種麹の種類はいくつもあるが、形態は二つだけ。一つは麹菌を培養して乾燥させてそのまま出荷する『粒状種麹』。もう一つが乾燥させて胞子だけを回収した『粉状種麹』。
菌種による分類ももちろんある。1番多く使われているのが『黄麹菌』。味噌、醤油、清酒の製造に用いられる。焼酎でも使われているね。
他には『黒麹菌』。これは泡盛の製造に用いられてきた菌種。
あとは『白麹菌』もある。主に焼酎製造に使われる。
種麹の基礎は室町時代
それで、種麹の基礎が築かれたのは、なんと室町時代だったんだ。
それまでは、出来の良い麹を保存しておいて、次に麹を造る時に種として混ぜる『友種法(友麹法)』という方法だったけど、必ずしも同質のものができるとは限らない。
それより以前はもっと原始的な方法で、穀物を放置しておいて、自然に麹黴が生えてくるのを待つという『自然種付け法』。これだとそもそも麹黴が確実にできるかどうかもわからない。
そうやって『自然種付け法』→『友種法』の後、室町時代に入った頃、麹に木灰を混ぜて培養したものを麹造りに利用すると失敗が少ないことが発見されたわけだ。
麹造りに木灰を使用することは麹菌の分離方法としては大変優れたものだったから、当然秘伝とされていたんだね。
それに、種麹製造が『麹座』の座員のみに許可されていたこともあって、明治時代に入る前は種麹を製造販売していたのはたったの2軒しかなかった。今でも10軒程度だそうだ。
清酒用の種麹は『もやし』と呼ばれていて、明治時代前には清酒以外には使われていなかったらしい。
製麹
麹造りのちゃんとした言葉は『製麹(せいぎく)』という。
種麹はそのまま使うのではなく、お米、麦、大豆などに加えて培養させた『麹』を造って使用する。
つまり『麹』は主に蒸した穀類に麹菌を加えて繁殖させたもので、その麹菌の酵素がおいしい発酵食品を生み出すのだ。
破精込み具合
お酒の場合、この麹は蒸米に振りかけられてお米のデンプン質を酵素によってブドウ糖に変える糖化の働きをするわけだね。
その過程で蒸米が溶けていくわけだけど、その解け具合が肝心なのだ。これで酒質が大きく変わるからだ。
それを見極めるのが米のところどころに生じる『破精(はぜ)』。
麹菌の菌糸が蒸米に根つき、喰い込んだように見える状態のことだね。米のあちこちに出てくる白い斑点。麹菌が徐々に繁殖してきた兆候。
この白い斑点、破精が、米粒にどのように生じているのかで、その後の米の溶け具合が異なってくる。この『どのように?』が『破精込み具合』。
この破精込み具合によって麹は大きく2つに分かれる。1つは『突破精型』で、もう1つが『総破精型』。
これは、蒸米に振りかける麹菌の量、麹室の温度、湿度などで麹菌の菌糸の繁殖度合いを調整して造っていくんだ。
突破精型
お米の表面への菌糸の繁殖はまばら。ただ断面を見ると内部までしっかりと食い込んでいる状態。
総破精型
お米の表面全体に麹菌の菌糸が繁殖し内部に食い込んだ状態で色は真っ白。
どちらにしてもお酒のラベルを見ても出てこない部分なので、呑んでいるお酒がどちらなのか?はわからないわけ。
ただ、突破精型の方は淡麗で綺麗で華やかな香りをもたらし上品なお酒になるとされ、総破精型は濃醇でコクがあり穏やかな香りのどっしりした酒質に仕上がるとされている。
他にも菌糸は蒸米の表面全体を覆っているけど内部には菌糸が深く喰いこんでいない見た目だけの『塗り破精』や、蒸米が柔らかすぎて表面にも内部にも菌糸が喰いこみすぎで使えない『バカ破精』という冗談のような名前のものもあるよ。
というわけで…
お酒づくりは奥が深いし良くわからない用語が沢山出てくる。でもわかるとなかなか面白い。
そういえば『雪の芽舎』の齋弥酒造店がつくるお酒に『美酒の設計』というお酒がある。
どういうお酒を造るのか?造りたいのか?で、それぞれの工程の加減が決まるわけで、まさに設計してからつくらないと駄目なことが良くわかる。
細かく具体的なレベルでこういうお酒をつくると!と予め完成したお酒のイメージを設定してからつくるわけで、実際目指すお酒の特性を決めることを『酒質設計』と言う。
相手が微生物だから設計通りにうまくいくとは限らないわけで、それを操る酒づくりに携わる方々ってスゴイなと改めて思う。
そう思いながら呑むと、美味しいお酒の有難味も増すというものだ。
こういう話を知ると、ついつい他の人に話したくなったりするけど、興味がない人には余程伝え方を考えないと至って詰まらない話に違いない。
もちろん相手にもよるけど、もし話すなら伝え方を考えて相手を見てからにした方が良いだろう。
ここで書いていることはどうなのよ?というお声は…受け付けません。悪しからず。
さて、これで麹造りはおしまいで、次回は『酒母造り』に移りたいと思う。
日本酒が出来上がるまでを知りたい!だったらこちらもどうぞ!!
この順番で読んでいけば日本酒が出来上がるまでがわかる!
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