青森で失敗しないおひとりさま関連記事
もしもあなたが今現在青森に居たり、これから青森に旅行や出張でどうせ行くなら、美味しい料理とお酒を飲みたいと思うかもしれない。
でもそう簡単に自分好みのおひとりさまでも居心地が良いお店は見つかるものでもない。そんな方の為に一軒の素晴らしいお店をご紹介。
青森市と八戸市は同じ青森?
青森県のおススメ居酒屋は「ふく郎」、そして「ばんや」
青森の青森市と八戸市にはおススメの居酒屋が何軒もあるのだが、その中でもそれぞれちょっと外すことが出来ないというお店がある。
それはどこか?と言うと、青森ならその一軒は『ふく郎』になるし、八戸なら『ばんや』となる。どちらも青森屈指の名居酒屋と言っても良いはずだ。
本当?青森市と八戸市は仲が悪いということ
それで同じ青森県と言えど、青森市と八戸市は随分と違う。例えば雪ひとつとってみても、青森県=雪国と思っている方も多いだろうが、実は八戸市は雪国と言うほど雪は降らない。
やはり太平洋側の地域と言うのは、北の方に行っても、日本海側に較べたらその積雪量は全然低くなるものなのだ。冬に何度も訪れているとそれを自然に感じるものなのだ。
雪だけではない。文化や方言なども当然違う。そもそも青森市は津軽藩だし、八戸市は南部藩だったのだから違うのは至極当然のことだ。
何しろ双方仲が悪いという話はずっと言われていて、松本市と長野市、前橋市と高崎市のそれよりもかなり深いなんてTVでネタにされたこともあるくらいだ。
確かに、この青森市・八戸市について歴史をちょっと調べただけで、なぜそうなってしまったのか?があれこれと出てきて、それが結構面白いかったりもするのだ。
ただそれはまた別の機会に譲るとして、今回は青森市の方の外せないお店の一軒である『ふく郎』の紹介をしたい。
「ふく郎」は青森市ではゼッタイに外せないお店
お店の名前はふくろうでもフクロウでも梟でもなく『ふく郎』。いわゆる森の賢者とか哲学者とか忍者とか言われる鳥のそれではない。
漢字では『福郎』。このお店で福が郎党(家来・家臣)になれば良いなということで付けたんだそうだ。お店にはフクロウの置物があるがそれらはお客さんが持ってきたお土産らしい。
アクセス
かつては青函連絡船との乗換駅だった青森駅からは歩いて行ける距離ではある。10分くらいだろう。ただ季節が冬なら当然雪がひどいので本来なら歩きたくはない。
自分の場合はこのお店に歩いて1分は掛からないホテルに宿をとることが多く、新青森駅からタクシーで行ってチェックイン、それから出掛けるというスタイル。
青森駅から歩くなら駅から真っすぐに延びている大通りを行けば、自転車が走るエリアと明確に分かれている歩道を行けばアーケードになっているので歩きやすいのは歩きやすい。
そして左の歩道を歩きながら十字路の左突き当りに三角形の建物が見えたらそちらに向かう。この妙に目立つ三角形の建物は『青森県観光物産館アスパム』。
三角形なのは青森の『A』を模っているからで、アスパムという名は青森県(Aomori)・観光(Sightseeing)・物産(Products)・館(Mansion)の頭文字を合わせたものだそうだ。
そのアスパムを目指す途中の交差点、ホテルJALシティの対角線上を左に曲がるとお店が見える。ひっそりとした寂しい通りにポツンとあるのが目指す『ふく郎』だ。
外観・店内
目印は暗い夜道にも目立つショーケースの中からこちらをじっと見ているねぶたの顔と、その柔らかな灯に照らされている並べられた一升瓶だ。
そしてスポットライトに浮かび上がる『地酒地肴』と書かれた白い看板。地酒と地魚の文字の間にはヱビスビールの恵比寿様が描かれている。
他にも『ヱビスビールあります』や『ヱビス樽生ビール取扱店の看板』とやたらヱビス押しなのがどうもこのお店の印象と異なるのでちょっと笑える。
渋いえび茶の右下に白く店名が染め抜かれている半暖簾(ここにもヱビス様だ)をくぐって中に入ると右手にはカウンター8席、そしてその奥には4卓の座敷がある。
カウンターのスペースにはテーブル席も何もなくカウンター席のみとなっている。座敷とは完全に分かれているので当然一人飲みにはうってつけの構造である。
カウンターの入り口側や座敷には灯の入ったねぶたが飾られている。ここはやはり青森の居酒屋だなとなる。
音楽はないがテレビがねぶたの横にある。それが否が応でも目の端に入ってきてしまって少しばかり気になるが、これも青森ならではということだ。
ねぶたのこと
さて、この飾られているねぶたはもちろん国の重要無形民俗文化財に指定されている青森ねぶた祭のものだ。ねぶたは青森ねぶた以外にもいくつもある。
有名なのは青森ねぶたと弘前ねぷただろう。弘前の方は『ぶ』ではなく『ぷ』。他にも『五所川原立佞武多』や『黒石ねぷた』、『平川ねぷた』、『木造ねぶた』、『大湊ネブタ』等々。
元々は七夕行事の一つだからあちこちで行われている。そして祭が終わると昔はねぶたを海に流して火をつけて燃やして沈めていたらしい。
もちろん今ではそんなことはしない。殆どのものは廃棄場で解体されてしまう。入賞作品は展示されたりもするが入れ替えで結局は廃棄される。
制作期間は約三ヶ月、費用は二千万円ほどかかるらしいが、一瞬の輝きを放った後すぐに廃棄というのは随分と勿体ない話だし何だか寂しい気もするが、全て保管するなんて無理だ。
何しろ大型のものになるとその大きさは約2mの台車を含めておおよそ幅9m、奥行き7m、高さ5mもあり、毎年それがいくつもつくられるのだから。
ただほんの一部でしかないが、このお店のように廃棄は勿体ないと譲り受けて何かしらの形で残されたものもある。これはとても素敵なことだ。
ここのねぶたはねぶた六代目名人位の北村隆氏のもの。北村氏は以前にイギリス大英博物館でねぶたを制作展示して世界最高のペーパークラフトとして紹介されたことがある。
他に実際のねぶたの彩色和紙の端切れを使った照明器具(KAKERA)をネットで見つけたことがあるが、これがかなりステキで未だに購買欲を刺激してくる。
ねぶたの家 ワ・ラッセは是非訪ねたいところ
そのねぶただが、もし時間に余裕があれば、ふく郎に行く前に『ねぶたの家 ワ・ラッセ』は訪れてみてほしい。2011年に出来た施設で、ねぶた祭の歴史や魅力を知ることが出来る。
圧巻はなんと言っても本物のねぶたが展示されているスペースだろう。暗い室内に極彩色に彩られた巨大なねぶたが並んでいるのを見るのはかなり楽しい。これだけでも行く価値がある。
有料と無料のゾーンがあるが、ねぶたミュージアム・ねぶたホール料金は大人600円、高校生450円、小・中学生250円とかなりリーズナブル。
営業時間は5~8月は9:00~19:30、9月~4月は9:00~18:30。8/9・10はねぶた総入れ替えでお休み。あとは大晦日と元日がお休み。
ここは是非行くべきだと思う。ねぶたそのものに興味がなくてもきっと楽しめるはずだ。へたな美術展以上にインパクトが強く面白いかもしれない。
「ふく郎」メニューあれこれ
カウンターの上や奥の棚にはご主人が経木に筆で書いたメニューが下げられている。どれも美味しそうで惹かれるものが多く選ぶ時には迷ってしまうだろう。
そんな中に『僕はやっぱりニシン好き(確か以前はうふっ!♡僕も私もニシン好きだったはず)』といったお茶目なものがあったりする。
「ふく郎」で食べるなら?
ここではやはり最初に『お刺身ちょっと盛(980円)』を頼みたい。美味しいお通しも出てくるので、一人ならこれだけでも充分満足出来る。
このちょっと盛はちょっとと言えば確かにちょっとだが、それでも五・六種類盛られていて、一人で食すにはちょうど良い量でありがたい。もちろん海がす近いから鮮度は申し分ない。
出される刺身はその時々で違う。例えば、まぐろ赤身を海苔で巻いたもの、メバル、油目、アジのみそたたき、ホタテ、甘エビ。
アジのみそたたきは、大将曰く普通たたきなら形を残さないようにするが、敢えて形を残しているのだそうだ。その方が魚を食べているという感じになるからだ。なるほど。
あとはせっかくの青森なら『津軽貝味噌(880円)』は食べておきたい。いわゆる『貝焼き味噌』。津軽、下北地方の郷土料理で、鍋代わりにほたて貝の殻を使う料理だ。
ホタテの貝柱や身などを殻に入れて味噌で煮込んで卵でとじて鰹節をかけたもので、殻を直接火にかけていて熱いので皿の上に新聞紙を敷いて出される。これがまた美味しいのだ。
貝焼き味噌と太宰治
ちなみにこの『貝焼き味噌』、津軽と言えばボクの中では太宰治なのだが、彼の小説の中にもこの料理が実は出てくる。
1944年(昭和19年)『新風土記叢書』の第7編として出された長編小説『津軽』の中、太宰が津軽の人たちに歓迎されるシーンで出てくる。
「…卵味噌のカヤキを差し上げろ。これは津軽で無ければ食へないものだ。さうだ。卵味噌だ。卵味噌に限る。卵味噌だ。卵味噌だ。」
どういうものなのか?もその後に出てくる。
卵味噌のカヤキといふのは、その貝の鍋を使ひ、味噌に鰹節をけづつて入れて煮て、それに鶏卵を落して食べる原始的な料理であるが…
ここでは病人が食べるものとされているが、お酒を飲む時に食べても美味しいのだ。以前に読んだ時からどんなものか?と思っていたが長い時間が経てこうやって出会うこともある。
あとは先程も出てきた『僕はやっぱりニシン好き(580円)』もお酒のお供として素晴らしい。飯鮨・味噌漬け・切り込みの三種盛りでおまけにちょっと盛りを頂いたことがある。
そして、忘れていけないのは『深浦糸もずく(380円)』。深浦町千畳敷海岸で海底の岩に付いたものを海女さんが素潜りして手づかみで取った天然岩もづく。
これが柔らかくて粘りがあって尚且つシャキシャキしている。沖縄のも美味しいが、これを食べてしまうと他のものはなかなか食べられなくなってしまうかもしれない。
もちろん他にも色々とあるのだが、刺身は鮮度抜群だし、調理したものも良い味だ。全てを食べているわけではないが、まず外れはないだろう。
「ふく郎」で飲むなら?
日本酒の種類は決して多いわけではないが、選択肢としては悪くないしこれくらいが迷わないのでちょうど良い。
- 豊盃『ん』(500円)
- 豊盃純米吟醸『愛娘』(600円)
- 青森杜氏純米『東の麓』(600円)
- 青森純米『田酒』(600円)
などなど。
この中の豊盃『愛娘』は三浦酒造㈱のお酒でこのお店用につくってもらっているものだと伺った。一回一回空気抜きをしていて保存状態に気を遣っているのが良い。
「ふく郎」は実は太田和彦氏の百名盃初体験の店だった
居酒屋好きなら誰もが知っている太田和彦氏は、居酒屋巡りをして本を書いたりTVに出たりというイメージだが、1970~80年にかけては資生堂のグラフィックデザイナーだった。
様々な写真家とタッグを組んで広告界に衝撃を与えたらしい。『異端の資生堂広告』という太田氏の資生堂雑誌広告作品を原寸に近いサイズで完全復刻した本を見るとそれがよくわかる。
そんな太田和彦氏の百名盃がこのふく郎ではカウンターのところに無造作に置かれている。この百名盃は太田氏出演『日本百名居酒屋』というTV番組で紹介されたお店に贈られるものだ。
そういうわけでこのお店、実は一部では有名なお店だと言っても良いだろう。TVだけでなく、太田氏の『居酒屋百名山』にも登場する。
最新の『居酒屋味酒覧』では、
西の「さきと」、東の「ふく郎」と言おう…東日本屈指の名居酒屋。
という具合にかなり絶賛されている。
なにしろあの福岡博多は赤坂駅に近い名居酒屋、『さきと』と同じレベルでの扱いとは…これはかなりの評価だ。
それでこの百名盃の箱は他のお店でも見掛けたことはあったが中までは見たことがなかったが、ある日何かのキッカケでこの盃の話となり、女将さんが盃を見せて下さったことがある。
そして、見ただけでは終わらず、なんとその盃でお酒まで飲ませてくれたのだ。つい最近も他のお店(松江のやまいち)で使わせて頂いたが、初体験がこの時だった。
この盃は番組で販売されたこともあったらしいが今ではもう手に入らないだろう。さすがに酒飲みがつくっただけあってちょうど良い大きさと薄さでデザインもなかなかステキだった。
「ふく郎」まとめ
さて青森市の『ふく郎』はいかがだったでしょうか?
太田和彦氏の『居酒屋百名山』にも載り、最新の居酒屋味酒覧には『東のふく郎』、『東日本屈指の名居酒屋』と詠われているお店。
鮮度抜群の刺身も大将がつくる料理も美味しく、地酒もちゃんと揃えていて、しかもコスパも高く、一人飲みには素晴らしく良いカウンターがあり、ねぶたが印象深いお店。
確かにここはゼッタイに青森市では外せないお店=青森市を訪れたなら必ず行っておきたいお店であることだけは間違いない。是非行ってみて下さい。きっと満足するはずです。
「ふく郎」アクセス・営業時間などなど
最後に『ふく郎』の基本情報。
住所:青森県青森市安方1-10-12
電話:017-777-3988
営業時間:月~金…17:00~23:00
土…17:00~22:00
日曜、祝日休
その他:禁煙(座敷は吸えたかも)
※吸いたい場合は灰皿をお借りして外で。但し冬はかなり厳しい。
おひとりさま居心地レベル:★★★★★(5★満点)
もし次に青森市に行くならどのお店?と考えると、やはりここだけは外せないことに改めて気付く。他にも良いお店はあるが、おひとり様で一軒だけとなるとやはりここだろう。
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